我ひとり、人の世の恋か不仲に思いを馳せつつ庭先を徘徊していると、風を受けて仄かに揺らぐハスの花の下で、豊かな蓮の葉が、風とは異なる不思議な引かれ方で水面に輪を作るのを見て、温和しくして水を覗き込むと、ちらりとして魚の蔭が、水底の方に消えていった。果たしてあれは鯉の姿か、それとも鮒の揺らした名残であろうか。我はしばらく蝉の声を遠く感じながら、食い入るように池を眺め尽くしていた。やがて恋人だろうか、若い男女の二人連れが、私の真向かいの遊歩路をとぼとぼと、少し不機嫌な顔をして歩き来るのが見えた。日盛りのほのうが草を焼くように、湿気がむらむらと立ち上がる。私はその暑さに驚くみたいに、慌てて散策を中止して、しばらくして家の中に潜り込んだ。麦茶を飲んで、一息入れるためである。コップを片手に、先の情景を一筆したためてみた。
蓮池を
巡らす夏の
恋人よ
蓮(はす)に揺れ
鯉(こい)か鮒(ふな)かの
浮き沈み
はちすさえ
暑さこらえず
黙るころ
蓮の花
水を境に
蔭(かげ)を知る
花ひらく
恋を祈れよ
蓮の池
2008/7/18