影法師

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影法師

前書き

夢に浮かんだ己(おの)が影が恋しくて
私はひたすらに走り続けた
束の間の幸せに心騒いだ
ようやく寄り添って肩を抱き留めれば
悲鳴に似た喜びはパリンと崩れ去った
振り向いた君は自らの影法師であったから
泣きながら悶えるように目が覚めれば
いつもの部屋に私は眠っていた
枕の裾に涙を流して

長歌

夢の中セピアの景色
誰一人居(お)らぬ夕暮れ
さまよえる涙のままに
鳥すらも鳴かぬ野原を

風吹けば心わびしく
声放ち伴(とも)を探せど
立ちつくす星の煌めき
三日月は哀しく笑う

お前には語る友とて
胸のうち支える妻も
居(お)るものかその指先に
三日月は哀しく笑う

はっとして眺める指に
赤き灯(ひ)を映し染めれば
たなごころ鼓動みたくて
泣いている震えるままに

朝霧の募る想いも
幾度なく溢(あふ)るる夢も
肝(きも)向かう心うずめて
積もりゆく聞く者もなく

うち震え走るわたしの
踏む草の響き虚しく
悲鳴さえ喉を殺して
ただ駆ける息も継がずに

夕闇は赤を濁らせ
のまれゆく群青の空
そのかなた微かな影が
うごめいた人を映して

心の灯(ひ)最後のかけら
振り絞り喜び願う
涙して崩れるように
駆け寄りし肩に手を掛け

振り向いた君の姿を
ひと目見て胸は凍(い)てつく
苦しくて私を逃れた
泣き顔の私の影よ

もうよそう逃れる君よ
はなれても私よりほか
寄り添える者は無かりし
今はただ共に消えよう
なみだ流して

短歌

夢に見た影も涙のまぼろしと
私ひとりの灯火(ともしび)おろして

2008/7/14

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