物語はいつも同じ言葉で始まり
結びの文ははいつも同じだった
おはようの挨拶がが記され
さようならの一言が残された
初めのページの前には何もなく
最後のページの後にも何もなかった
真実はそれだけだと知ったとき
生きていることは地獄になった
物語はいつも同じ装丁で飾られ
印刷の活字はどれも同じだった
登場人物の紹介が記され
締めくくりの一行が残された
初めのページの前には何もなく
最後のページの後ろにも何もなかった
それだけが真実だと知ったとき
こころのなかは真っ黒になった
でもそれはすべてではなかった
パンドラの箱に残された希望のように
小さなページの合間には
沢山の夢があって
沢山の幸せがあって
沢山の悲しみがあって
激しい闇の嵐が過ぎた夜明けには
穏やかな春の日だまりが記されていた
僕に刻み込まれた沢山の思いは
閉ざされた世界をくぐり抜けて
果てしなくこの胸に広がって
僕の中でゆたかに咲き誇るだろう
沢山の夢が広がって
沢山の幸せが広がって
沢山の哀しみが打ち寄せて
震えおののいた物語の思い出は
優しい糧(かて)となって輝き始めた
事実はいつもそこに横たわって
冷たく人を突き放す
でももしかしたら真実は胸のうち
僕たちの思いそのもので
僕たちはただ真実を探して
それぞれの物語を束ねていく
僕の物語がたとえ途切れても
大丈夫、僕たちの物語はきっと
引き継がれて続いていくのだから
一歩一歩つまずきながら
今はひたすらに歩んで行こう
それが生きることだって
信じて歩んで行こう
P.S.
小説の始まりには等しく誕生が書かれ、
何時しか定められた終焉を迎える。
始まりと終わりを同体と捕らえる限り、
読み続けることはただ苦痛だろう。
ほんの短いページの行間に込められた、
無限の可能性に共鳴出来ないならば、
想い乏しく生き続けることは地獄だろう。
プロローグとエピローグの合間に広がる、
短くまとめられたページの合間に広がる、
無限のプロセスの可能性を、
ページをめくる楽しさを知る者にのみ、
花咲く豊かな人生は存在する。
だから本をめくるのは止めにしよう。
今はただ人生のページを勇気出して、
ページを繰って進んで行こう。
2008/07/21