グラスを傾けて赤いワインが光る
淡い就寝電灯に照らされて夕日のように
小さく揺らせば淡くきらきら瞬いて
静かに暮れる秋のように淡く燃える
遠い昔まだ好奇心だけで生きていた
ランドセルが大きく見えた頃の思い出
夕焼け焦げて瞬き始めた一番星の下で
色も霞んだ町のはずれに人々が集う
枯れ木の山に燃える新聞をかざして
必ず始まる楽しいたき火の秋祭り
涼しくなった大気がぱっと照らされ
時々燃える新聞が赤く舞い上がれば
追いかけて走り出す子供たち
舞い落ちる新聞はまだらに鈍く燻って
濃い赤に年老いた星のような呼吸を
繰り返しながら暗く沈んでいく
消えかけた炎に駆け込み踏んづければ
炭になりかけた最後の瞬きが飛び散って
黒ずんだ赤い火の粉を散らした
それが楽しくて楽しくては
肌寒い秋の風が肌を抜けていく中を
一心不乱に何時までも走り回っていた
話に時を忘れていたおじさんが不意に
顔を高く上げては僕らに叫ぶ
ほら、指さした天空にはひときわ
光度を増した火星が赤く燃えて
細い秋の星座達を照らしている
深く広い海のようなこの宇宙が
遠い未来に果てしなく続いてる
今と将来は堅く繋がっているのだと
心の中でぼんやりそう思った
あれからほんの少し時が流れ
何時からだろう走るのを止めたのは
あの時あそこにいたという証
この赤いグラスから透かしてみても
ただ遠くに蜃気楼が浮かぶばかりで
掴みとれない夢物語のよう
遠くで小さく虫の声が聞こえ
秋が深々と更けていく
作成時2003/10/23