アーサー王の物語り(5)

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5.ゴーロイス、奮闘すること

 コーンウォールに戻ったゴーロイスは、
ユーサーに反旗を翻すブリトンの王達に書状をしたためた。
「今、諸王立ち上がり、
背後よりユーサー軍に迫れば、
我々もまた兵を繰り出し、
ペンドラゴンの軍は敗走するであろう。」

 これを参謀にして話術に長けるブラシャスに渡し、
王達の説得に向かわせることにしたのである。
もとよりブラシャスの進言を採用したに過ぎぬ。
気さくな王は城門に立つと、自らブラシャスを送り出した。
「ブラシャスよ、
今はお前が頼りだ。
よろしく頼むぞ。」
「王よ、
ティラビル城にユーサーを足止めすることが、
今は勝敗の分かれ目です。」
「我を誰と思う。
兵の扱いなら、
ユーサーなどものの数ではない。」
「王よ、
敵は様々な策を用いるでしょう。
期を見て先陣を蹴散らしても、
決して深追いはせず、
援軍の到着をお待ち下さい。」
「もう分かった、何度も言うな。
お前と来たら、
若造のくせにワシよりも沈着冷静なのだからな。
さあ、行くがよい。」

 このように王が言えば、
ブラシャスはなんだか急に恥ずかしくなり、
「申し訳ない」と王に礼を取ると、
ただちに身をひるがえし、
王城を後にした。
荒波を越えて海鳥が、
彼の走る彼方に飛んでいく。
ブラシャスはティンタージェルで一番の忠臣であり、
まだ年も若い青年でもあり、
ゴーロイスを実の親のように慕っていたのだった。

 王は忠臣の言葉に従った。
すなわちイグレインをティンタージェル城に残し、
兵と騎士達を率いてティラビル城に向かうと、
十分な武器と食料を蓄え、
守備を固めるべく城を鍛え直した。
迫り来るユーサー軍に備えるためである。


やがて諸王の王を掲げる旗が、
城壁から望み得る頃には、
備えを固めたゴーロイスも、
先陣を蹴散らすべく城門を打って出る。
ついに双方の憤怒が大地を覆い、
落雷となって火花を散らすがごとく、
激しい乱闘が開始したのである。

 深追いをせず進軍を斥けるゴーロイスのいくさは見事であった。
まるで湖に返された魚のごとく、
ユーサーの軍隊を駆けずり回り、かく乱し、
弱きを挫いては、強きを逃れ、
怯んだ隙を見てティラビル城に舞い戻る。
何度か待ち伏せの計略を仕掛けてみたが、
いざとなるとゴーロイスを筆頭に兵を切り崩す荒武者達の、
鬼のような突撃に、見事に包囲を突破され、
そのままユーサー目がけて迫った時などは、
竜王の軍に危機が訪れるほどだった。

 こうして7日が過ぎてもティラビル城は陥落せず、
ユーサーは激戦の中にありながらも、
「はあ」とか「ふう」とか、
情けない溜息を繰り返すばかり。
士気の上がらないこと甚(はなは)だしい。
ついには兵達にまで溜息が伝染し、
「はあ」とか「ふう」とか呟くのを見て、
武将達は大いに不審を強めた。
このまま戦局が長引けば、
どこのブリトンの王達が、
どこの異民の部族達が、
背後より迫り来ないとは限らない。

「ペンドラゴン王は何を思い悩むか。」
見かねた臣下達は悩み、
意見を出し合ったが答えは出ない。
ともかくも、
直に聞いてみるのが一番だということになって、
王が気を許して側に置いている若き騎士ウルフィアスを使わし、
王の心意を尋ねることにしたのである。

2007/04/12掲載
2007/06/08改訂

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