マーリンに連れ出されたアーサーは、エクターの元に預けられた。彼は王宮の財政を任される騎士であり、ユーサーへの忠誠高き男として知られていた。生まれたばかりのアーサーはまるで黄金に輝くよう、エクターの妻(名称?)は少し前に生まれた自らの子供ケイと共に、この美しき幼児を大切に育てた。幼い2人はよく母親からブリトン人の神々の物語を聞かされた。ケルトの民とも言われる自らの神話についてである。(その引用がいくつか続く。)
しかし王宮では、イグレインが泣きながら懇願するので、ユーサーは1度だけアーサーの元を訪れたことがある。エクターに挨拶を交わし、幼き幼児を妻に抱きかかえさせれば、妻は涙を流しながらアーサーを抱きしめた。エクターと妻が大切にアーサーを育てていることに安心した2人は、城に帰っていった。「自らを後継者であると思わせずに育てるこそ肝要」とのマーリンの意見に従って、この後ユーサーがアーサーの元に訪れることはなかった。しかしイグレインは忘れた頃に密かにアーサーの様子をうかがいに来るのだった。エクター達は王妃と悟られないように知人のように接したので、アーサーはいつしかイグレインのことを、「○○姉さん(後で考える)」と呼ぶようになった。彼女の美しき姿は、未だ10代の娘のようであったからである。
少年になったアーサーは、ケイと2人で遊んだ。例えば馬に乗って野を駆け、例えば森に入って探検をしたり、動物を狩ったりもした。時には木を剣に見立てて騎士の真似事をするうちに、高じて喧嘩になることもあった。2人が傷だらけで帰るのを見て、母は嘆き、父は大いに笑った。
やがて少年達を恐怖のどん底にたたき落とす、お勉強のシーズンが到来した。もちろんこれまでも両親から読み書きなどは楽しく教わっていたのだが、ここにきて正式な家庭教師をつけて、勉強のお時間が設けられてしまった。
アーサー達はいろいろなことを学ばされた。例えばローマ帝国以来の伝統となった文法と修辞法を学ばされた。数学も学ばされたが、これにはケイがのめり込んだ。アーサーは大嫌いな科目であった。アーサーが興味を持ったのは各国の歴史と情勢についてだった。(これについて大陸のゲルマン人の国家などを記述。)
しかし、基本的に机上の勉強にうんざりしたアーサーは、自分だけさぼって森に向かうことがよくあった。そこでマーリンという不思議な少年に出会い、たちまち友達となった2人は、さらに森の奥に入り、これまで知らなかった森の不思議な精霊や、洞窟の中の不思議の世界を探検した。マーリンとはその後も度々森で遊んだが、それはケイが居ない時に限られていた。ある時、マーリンは空を飛べるかとアーサーに聞いた。そんなことが出来る奴が居るものかと笑うアーサーに対して、マーリンは空高く飛び上がり、目を丸めたアーサーが自分も飛びたいと懇願すると、マーリンは疑いの心なく自然と一体になれば誰にでも出来ると入って、こつを教えてくれた。彼はただ一度だけ空を飛ぶことに成功して、マーリンを共に大はしゃぎしたのだが、その翌日2人で遊んでいるところを訝しがったエクターが見つけ出し、勉強をさぼって何を遣っているかと手を引っ張る。「だって僕は彼と遊びたいんだ」と叫ぶアーサーだったが、「誰もいないではないか。ふざけた真似は止せ」とエクターに諭され、えっと思って振り向くと、そこには誰も居なかった。それいらい森では決してマーリンに会うことはなかった。
その頃ユーサーの宮廷では、云々。(必要なら記入)
10代に入ったアーサーは、ケイと共に騎士達の子供を集めた学校に通うようになった。長らくローマの先進文化を教授したブリトン人達には、ギリシア人達が開始しローマに受け継がれた教育システムが流入し、ローマが崩壊し駐屯兵が消えた後にも、まだ何人かのラテン語教師とギリシア人の教師が残って教育の火種を保っていた。また剣術や馬術を磨く実践科目にはブリトン人の優秀な教師が居た。ローマ式の教育を受けたユーサー・ペンドラゴンは、教育の火種を絶やさぬため学校を復興し、王宮の近隣には有力な騎士の息子が通う学校が保たれていたのである。この学校はアーサーの時代にも継続されていたが、彼の死後顧みられなくなってしまった。これはまだずっと先の話しである。
学校でも金髪で均整な顔立ちのアーサーはたちまち注目を浴びた。白い肌は温和しそうなのに、顔は生意気そうだというので、上級の者達から目を付けられたことがある。その内の一人がアーサーをからかって馬鹿にした時は大変だった。激昂して殴りかかり、鼻をへし折り、相手の腕を折って、後でエクターから大いに叱られたものである。しかし上級生の中でも一番屈強のリーダー格の少年を、剣術の時間に皆の前で打ち負かしてからは、誰もが彼に一目おくようになっていった。
彼はたちまち同級生を束ねるリーダーとなり、実戦競技では率先して最優秀の成績を収め、一方学問においては、あまりに出来不出来が激しいので、教師達を悩ませた。おおよそに彼が得意としたものは、戦術、国際情勢、弁証法などであり、まるで興味を示さなかったのは高等算術、詩文、そして法律だった。アーサーほどの偉大な統治者が法に興味を持たなかったのは不可解かとも思われるが、統治と学校の法律は異なるものらしい。いずれ当時の彼にはまったく興味がなかったのである。そして法律と算術は、むしろケイの方が興味を持って、親のエクターなどは2人の得意・不得意科目の差があまりにも激しいので、2人を足して初めて一人前だと言って溜息をついた。
授業が終わった後は、よく王宮の城下に広がる町に出かけ、新鮮な都市の息吹きに触れて遊び回った。彼らにとっては町中も、森の中と同じぐらい、好奇心をそそる探検の場所だったようだ。時には授業を抜け出して市場に繰り出した。音楽の授業は最優秀では無かったものの、アーサーは竪琴によって歌を歌うのが大好きで、市中で芸人の技芸や音楽がある時には、実技の授業さえさぼって出かけることがあった。町中にはいろいろな刺激があった。(それについて記述。)
実技の授業ではアーサーは大抵負けることは無かったが、時に彼を負かす強敵が2人居た。一人は長年一緒にいて彼の癖を知り抜いているケイであり、彼は恐ろしくスタミナが無頓着な人間であった。つまり何というか、1日たっても戦い始めと同じようにいくさが出来るのだった。後には九日九晩水の中で息が出来るとか、九日九晩寝なくてもいくさが出来るという伝説さえ生まれている。さすがのアーサーも戦い初めて数時間仕止めきれないと、その後はケイが勝利する決まりになっていた。しかし実際のところは大抵1時間と立たないうちに、アーサーがケイの剣を打ち落とすことは言うまでもない。
もう一つ不思議なことはこのケイは相手がアーサーのような剣術の上級者だと、時には恐ろしい集中力を持って互角にも戦えるのだったが、自分の命が危機にさらされていないような授業中の実技では、時にぼうっとして格下の相手に打ち込まれることがよくあった。このうっかりした側面は幸い実際のいくさでは見られず、アーサーは後々までこれを不思議に思ってからかった。
他にもう一人、時にアーサーを負かすことがあったのが、ガウェインという少年だった。彼はかつてユーサーに反旗を翻したオークニーのロット王の息子だったが、ロットがユーサーに降ったために、この学校に入ることを許されたのだった。ガウェインは実際はロットの初めの妻の息子だったが、後の歴史書では誤って2人目の妻モルゴースの息子だとしている。一見細身のアーサーとは違って、頑丈な筋肉質の体を持つ大男で、非常な怪力の持ち主で、剣や槍の扱いではアーサーには敵わなかったが、投石や取っ組み合いではアーサーより勝っていた。2人は当初互いをライバル視して仲も悪かったが、授業を抜け出した先でばったり鉢合わせをしてからは、非常な仲良しになったのだった。彼は梨と林檎が大好物で、アーサーとケイと3人で市場へ繰り出して、時には屋台の果物をかっぱらって食っていた。恐るべき事に彼らはこれをリンゴ狩りと称していたのである。獣狩りと称して、肉屋の肉を拝借した時は、折り悪く主人に見つかって、その晩から母親が口を利かなくなったので、さすがのアーサーとケイもこれにはショックを受けて、以後このような悪戯は止めにした。
円卓の騎士としてはもっともアーサーと共に行動する期間が長い騎士の一人。後半ラーンスロットに息子を殺されてますが、ここでは彼をモルゴースの息子とする原作に従わずに行きます。アーサーとガウェインを同じぐらいの年齢と考える方が自然に思えるからです。これはもともとモルゴースとアーサーの近親相姦事件を同じぐらいの年齢で行わせるために、モルゴースの年齢を引き下げたために起きた問題で、アーサーを中心におくと、モルゴースの年齢を引き下げる方が得策だと思えるので、とりあえずこの設定で話しを進めてみましょう。
2007/07/30メルマガより