特別講座の始まり

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特別講座によせて

 先生の著述した「新西洋音楽史に基づく変奏」を初めて見つけてから、いったいどれくらい時が流れただろう。当時まだ高校生で、クラシック音楽のことなんてまるでお構いなしだった私は、小説より面白い知的読本があるからと先輩に薦められてこの本に目を通したのだった。まだ言葉の綾が織りなす独特の言い回しのリズム感と色彩に気が付かなかった私は、ついに先輩の頭がどうかしたに違いないと決めつけ、読んだ振りをして返してしまった。しかし、なぜかそのほんの執筆者である先生の名前は忘れられなかった。その後高校を卒業し、たいした望みもないままとある大学に通い一人暮らしを始めた私が、再び先生の本と向き合うきっかけとなったのは、偶然流していたFM放送だった。ちょうど朗読の番組で、いつもと趣向を変えて小節の替わりに専門書を読んで見るという一風変った試みがなされ、その番組で「新西洋音楽史に基づく変奏」が取り上げられ、同時に本体である「新西洋音楽史」の朗読が行なわれていたたのだ。何気なく聞き始めた朗読とその後の先生の音楽史に関わる話に、私はいつの間にか部屋の片づけをしていたことも忘れ、すっかり聞き入ってしまった。大学で下らない講義を開いているあの教授共と比べて、なんて内容の豊かな、そして興味を引く言い回しなんだ。私は、その時に初めて先生の著作する文章のリズムと修飾的色彩の織りなすハーモニーを理解した。そうだ、こんな授業を望んでいたのだ。どうせやりたいことも定まっていないのだ、授業が面白いだけで道を選んで何が悪い。私はいても立ってもいられなくなり、翌日直ぐに大学に退学届けを提出すると、先生の著述した「新西洋音楽史に基づく変奏」と本体である「新西洋音楽史」に没頭した。私が初めて西洋音楽に触れ、その歴史を知ったのはこの時が始めてである。私は下調べを終えると、すぐさま、先生の年間講座の申し込みをすませて、晴れて4月からの新受講生となったのである。先生の講義は、まず下巻のロマン派から開始して、一気に今日に至る音楽を概観してから、上巻に戻るというカリキュラムになっている。どうなることか分らない、取りあえず先生の講義に脱落せずついて行こう。私はそう決心したのだった。
 ここにあるレポート群は、先生が「新西洋音楽史」上・中・下巻を教科書にして講義を行った西洋音楽史講座の自分用のまとめになっている。出来るだけ多くの人が、「新西洋音楽史3巻」と「新西洋音楽史に基づく変奏」を通読してくれたなら。そう思った私は、講義内容をまとめたレポートを講座に合わせて掲載していくことを思いついた。そんな制作の経緯から、このまとめを十分に理解するためには新西洋音楽史を持っている必要があるかもしれない。




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